木の家を建てる設計事務所
所沢のTさん宅。
竣工して2度目の冬を過ごしています。
2階部分が二世帯住宅の子世帯であるTさん家族のエリア。
柱・梁の木組みをそのまま室内にあらわしたインテリアです。
↓水平天井部分はロフトの床面。斜めに見えるのが、屋根の勾配なりにつくった天井です。
この住まい、外壁と1階床には12cmの厚みでセルロースファイバー吹き込み断熱が施されています。
(セルロースファイバー断熱については、以前に記事を書いていますので、下部リンク参照してください。)
しかしこの空間のように、小屋組みの登り梁を見せて用いる屋根・天井構成では、厚みの必要なセルロースファイバーはうまく納まりません。
なので、この家では屋根断熱を別の方法で行いました。
室内に見えている天井板は、杉の厚板30mmです。
↓その上に断熱材として、ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板を敷き、通気層を設け、
杉の野地板を張る構成としています。
ゾノトライト系ケイ酸カルシウム板は、元々は防火用の被覆材でしたが、断熱性もあり非常に吸放湿性に優れた無機質素材です。
建材の吸放湿性を重視し、石油系の断熱材をあまり用いたくないと思っている作り手から注目され、住宅用建材としての使い道が生まれました。
夏の夜間、通気層に流れ込んだ空気の湿気をたっぷり吸収し、翌日中は逆に、屋根面が受ける日射で温められ、貯め込んでいた湿気を通気層に放つことで気化熱が奪われ、下の空間に日射熱を伝えない働きをしてくれるのです。
断熱性能値以上の働きをしてくれるこの素材のおかげで、分厚い断熱を施した住まいと変わらない夏を過ごせたとのことでした。
そして冬の話です。
屋根の断熱が脆弱な家では、天井面で室内空気が冷やされ、冷気が落ちてくるというような現象が起こります。
Tさん曰く、去年冬も寒さの厳しい今冬も、そういったことは感じたことが無いとのこと。
それならと、床・壁・天井の表面温度を測定してもらいました。
表面温度は、部屋の空気温よりも人の快適を左右するので。
↓このような、「放射温度計」で測ります。
ある日の夕方6時頃、帰宅した際の温度。
日中2階には誰もおらず無暖房状態(下階親世帯では床暖房使用)。
外気温が2.3度。
床面:18.6℃
外壁内側:18.3℃
天井:18.0℃
とのこと! 3つの面に殆ど温度差無く、しかも外気温より15℃以上高く保たれている!
理想的な温度です。
そしてある日の早朝5時 起床してすぐの無暖房状態(1階も無暖房)
外気温は1.3℃
床面:18.4℃
外壁内側:16.2℃
天井:16.0℃
屋外は放射冷却の一番きつい時間帯ですが、思ったほど天井面は下がっていません。
しかも外壁内側と大して変わらず、不快な室内の温度差が生まれていません。
小型の石油ファンヒーターで暖房している夜10時の温度はというと、、、
外気温は3.0℃
床面:20.0℃
外壁内側:20.4℃
天井:20.6℃
ほんの少し天井が高めですが、殆ど温度差無しと言ってよいレベルかと。
快適さを、数字が証明してくれました!
家を支える骨組みである柱・梁がそのまま見えて、無垢の厚板あらわしの空間は、日本の伝統的民家建築を引き継ぐものです。
ひとつの答えが見えた気がしました!
ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』&『住宅リフォーム至高ガイド』(エクスナレッジ刊)その他、住宅に関する執筆多数。
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