木の家を建てる設計事務所
夏休みをいただきました。
実家金沢市への帰省を兼ねた、娘①との2人旅を敢行。
下地図のように、一筆書きで各所を巡りました。
娘①は18歳ながらまだ運転免許を待たないため、1150kmを、私一人での運転強行となりました(苦笑)。
はじめの訪問地は長野県喬木村。
昨年1月に他界した友人の墓参です。
同じ郷里のご主人実家の墓所に、新しく素敵な墓石が建てられていました。
手を合わせて振り向くと、遠くまで景色が広がります。
S子さんの生まれ育った実家を、谷を挟んだ向こうの斜面に臨める向きに、墓石を建てたのだそうです。
皆に見守られ、皆を見守ることのできるお墓。寂しくない場所でよかった!
椋鳩十(むく・はとじゅう)記念館
児童文学作家の椋鳩十さんは、ここ喬木村のご出身だそうで、立派な記念館がありました。
動物と人間の交流を描いた、心に響く作品をたくさん残されています。
こども達が小さなころ読み聞かせた、「大造じいさんと雁」や「マヤの一生」などが思いだされます。
読書運動である『母と子の20分間読書』運動を提唱した方だと、訪れて知りました。
中央道にて、宿泊地の名古屋の親せき宅へ。
ここは7年前に中規模リフォームを済ませた住宅です。
美しく使われていますが、70代の夫婦二人にとって、広い家は年々掃除が大変になると...。
社会問題の一端を聞くようでした。
翌朝出発して向かったのは犬山城。
現存する天守閣12城のうち、5城の国宝のひとつで、最古のつくりだそうです。
小規模ながら風格がある佇まい。
美しいプロポーションです。
天守より臨む西側の眺め。正面は山城のあった伊木山
滋賀の湖北地方へ向け、犬山を後にします。
琵琶湖の北、古戦場で知られる賤ヶ岳をはさんでに寄り添うようにある「余呉湖」をご存知でしょうか。
周囲6.4kmの小さな湖で、3万年前に古い琵琶湖から分かれたとのこと。
琵琶湖と異なり対岸が見渡せる小さな湖は、長閑な田園地帯の中に、訪れる人も少なくひっそりとありました。
余呉湖にほど近い集落の古民家へ。
築250年の伊香型民家を、知人の伝手で見せていただきました。
余呉は雪国で、数キロ下った琵琶湖河畔地域とは積雪量がまったく違うのだそうです。
伊香型の特徴の妻入り茅葺屋根にも、今は板金が被さっています。
入ってすぐに土間。
その奥を、今は全部を同じレベルの板張りとしていますが、手前半分は土間上に籾殻を敷き詰めた「土座」という床だったそうです。
この民家「余呉・弥吉」という名で、イベント企画が行われています。
芝居の上演や、朗読会、ミニコンサートが企画され、子どもたちの自然・暮らし体験の場としても使ってもらっているとのこと。
竈も残してあり、薪をくべ、羽釜で飯炊きができるそうです。
この日の宿泊は、奥びわこの木之本宿。
丁度縁日の日とのことで、地蔵尊の参道は賑わっていました。
古い宿場町の街並みが、修景されつつ残っています。
翌朝、石川県に向け出発。
北陸道を北上します。
立ち寄ったのは加賀の片野鴨池観察館。
小さな湿地池ですが、ラムサール条約に指定されている貴重な野鳥の飛来地です。
この季節、鴨はまだ飛来していないので、観察できたのはダイサギ、アオサギ、セキレイ類でしたが、
9月末には北方からたくさんの鴨類がやってくるようになり、晩秋から冬が終わるころまで賑わうとのこと。
希少種のトモエガモや大型の雁の仲間のヒシクイ、鴨を狙うオジロワシやオオタカ、チュウヒなどの猛禽類も観察できるそうです。
レンジャーの方の詳しい説明がありがたく、今度はお正月に訪れますと宣言し、観察館を後にしました。
ここまで来れば海岸はすぐそこ。
片野海岸。
まだ8月ですが大きめの白波が立ち、海水浴客は見当たらず、数人のサーファーが波乗りしていました。
晴天の空の色を映した、ブルーグリーンの美しい海にため息。
休憩で立ち寄ったカフェ「イベール・ボスケ」。
田園の中の一軒家で、建築は堀部安嗣さんの設計によるものです。
ギャラリー間の展覧会で、チョコレート製の外観模型が展示されていて、目を引いていた建物です。
ショーウインドウには、この片田舎に(失礼!)このクオリティ?!と思うほど、洗練されたケーキが並んでいて、
ビックリでした。味も絶妙のハーモニーがあり、GOOD!
大きなコーナー窓の目の前に大きな胡桃の木。
オーナーの方曰く、この木が気に入り店をここにオープンさせたとのこと。
今年もたくさんの実が収穫できたそうです。
加賀市を後にし、昼過ぎには金沢の実家に到着。
ゆっくりと金沢で二日間を過ごしました。
伝建地区にも指定されている「東茶屋街」に少し立ち寄った際に傍らの浅野川河原に下りました。
私にとっては、子どもの頃を思い出す懐かしい風景です。
娘①も従妹やジジババと海や買い物に出かけ、ご機嫌に。
さて、帰路は埼玉・戸田まで宿泊無しの行程です。
畑の野菜と、たくさんのお土産を頂戴し、出発です。
2時間弱で、この旅最後の訪問地、長野県白馬村の青鬼(アオニ)集落に着きました。
国の「伝統的建造物群保存地区」に指定されている山村集落です。
14棟の、茅葺兜づくりの伝統民家が集まって建っており、日本昔話に出てくる村のようです。
雪深い地の建物らしく、規模が大きく立派な佇まいです。
伝建の選定は建物群だけでなく、集落背後に広がる棚田や堰も対象となっています。
野積みの石で棚田が形成され、それを縫うように細い堰が巡らされており、日本の棚田百選にも選ばれているとのこと。
茅葺民家と相まって、まさに日本の田園風景の印象です。
1軒の民家が改修中で、施工者の方に話が伺えました。
伝建地区のため、改修には国の補助金が出るそうです。
が、対象は外観を元の通りに修繕することと、耐震性に重きを置かれるので、住み手の生活に関わる部分の改修費は限られるとのこと。
それでも、土壁と伝統的継手仕口を用いて、しっかりとした改修が行われているように見受けられました。
明治期に大火に会い、この地区の多くの建物が焼けてしまい、急いで再建された建物群が今に残っているとのことで、伝統的スタイルではあるものの、
建物自体の歴史は150年に満たないとのこと。
この家については差し鴨居も用いられておらず、「それほど上等なつくりじゃないよ」と大工さん。
切断された梁の木口が見えているのは、以前の無計画な改修で兜屋根の寄棟部分をごっぞり切り取ってしまったのだそうです。
今回の改修で、材を継ぎ足し元の形を再現するというから、取り合いを考えると、大変な仕事になりそうです。
金輪継ぎに加工された栗材。
この後、白馬で蕎麦を食し、観光は終了。長野まで下りて再び高速道路を走り続けます。
上信越道から関越道、そして最後は外環道を通って自宅へ。
5日間1,150キロの旅を終えました。
疲れたけれど、こうやって振り返ってみるとたくさんの出会いと経験があり、思い出深い旅になりました。
これを糧に仕事に精を出します~。
ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』&『住宅リフォーム至高ガイド』(エクスナレッジ刊)その他、住宅に関する執筆多数。
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