木の家を建てる設計事務所
久々にお訪ねした建主のOさんから、相談事を持ちかけられました。
Oさん宅では、居間に薪ストーブが設えてあります。
ストーブがメイン暖房のお宅にとっては、薪の確保は重要課題ですが、
Oさんのところでは、最近知り合った親切なお年寄りが、薪用の木を持ってきてくれ、とても助かっているとのこと。
おじいさんの持ってきてくれる木は、よく乾いていて火持ちがよく、これまでの薪と暖かさが違うと言います。
で聞いてみると、なんとその木は、大工をやっていたおじいさんが建築に使うために長年かけて集めた丸太を、玉に切ったものだったというのです!
Oさんは、そんな勿体ない話はないと驚き、何とかその丸太を建築材として生かすことはできないものかと、設計者の私に声をかけてくれたのでした。
とにかく見て欲しいとのことで、訪問した材木置き場。
聞けば、裏山で先祖が育てた材や、吾野の市場から買った材を、こうして集めて少しづつ使ってきたとのこと。
何十年も寝かせている材が殆どです。
梁に使う赤松の丸太を中心に、まだまだたくさんの材があります。
ほかにケヤキやサクラなども。
小屋の奥には、現役で使える帯鋸もあり、この場で製材してから搬出することが可能です。
これらの材、Sおじいさんは「そんなにいいものは残ってないよ」と言いますが、ご自身で切り旬や保存に気を使って来たものばかりです。
中には虫の喰ったもの、割れの入ったものはありますが、使えるものは少なくないはずです。
乾燥は間違いなく、ばっちりです。
Sおじいさんはすでに87歳。
これから孫の家を・・・とおっしゃっていますが、それはおそらく無理なことはご自身も承知のはず。
ただ人に譲るにしても、材の目利きと、木取り・手刻みのできる人に、なるべくまとまった形で渡したいとの思いがあるようです。
知り合いの大工さんらに声掛けし、見学させていただくところから始めたいと思っています。
場所は所沢市西武。ご興味ある方は連絡お待ちします!
ちなみに、Sおじいさんが20年を費やして、8年ほど前に竣工したご自邸がすぐ近くにあります。
うれしそうに見せてくださったので、少しだけご報告を。
2階の屋根、下屋だけをつくるのに、それぞれ1年づつかかったと。
精度のいい仕事がなされていて感心すると、「腕より材木だ」ときっぱり。
建築に20年を費やしたそうですが、この家のための材木集めはその何十年も前からずっと行って来たそうです。
構造材・造作材だけでなく、建具もすべてSおじいさんが支給して、建具屋さんに作らせたと。
泥壁も、自分で竹小舞を組み、前の家を壊した際に落とした土に新たに泥と藁を加えて寝かせ、自分で塗ったと言うから、筋金入りです。
5間が1本の桧軒桁と欅敷居
玄関せがい欅
遊びで自ら彫ったという松竹梅が素朴でかわいらしい
座敷天井杉の羽重ね張り竿縁押え 色の統一感が素晴らしい!
見事な欅の縁甲板 厚み2寸とのこと!
この広幅板の隙間防止には、さすがにボルトを使ったそう。
大阪障子もSおじいさんが材を支給
これまた見事な山桜の敷居。全く暴れ・割れなく、襖の動きはきわめてスムーズ。
欅は摩耗に弱く、敷居には桜が一番とのこと。
立派な欅の差鴨居、これを撮り忘れ残念でした。
ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』&『住宅リフォーム至高ガイド』(エクスナレッジ刊)その他、住宅に関する執筆多数。
新築・リフォームのご相談、土地探し、耐震診断、既存住宅調査など、小さなことでもお気軽にお問合せ下さい。
埼玉の木と、アトリエ・ヌックの家づくりをもっと身近に感じていただけるよう、
カタログ「心地よい木の家を」を作成いたしました。
ご希望の方には、無料でお届けしますので、お気軽にご請求ください。