わが家の畳、表替え

入居前リフォームをしたわが家。
今月末で引っ越してからちょうど7年が経過します。

入居後3か月くらいの様子です。


家具も少なく、畳もまだ青さを残しています。



いつもお世話になっている加藤畳店さんに入れていただいた畳は、5層構造の国産藁床（わらどこ）で、表（オモテ）は熊本産イ草で織られたオーガニック表です。
しっかりとした床（とこ）と目が積みピシッとした表。
たった3畳のコーナーですが、見て触れた人誰もが「いい畳！」と口を揃える、存在感抜群の畳です。

でも、板の床と違い、畳は消耗し、随時更新が必要な素材です。
茶の間のようなヘビーユースな場所の畳は、5年以内に表替えが必要と言われています。

わが家では、約2名がいつもここでゴロゴロ、私は週数回エクササイズに使用、猫もお昼寝場所にと、使用頻度はけして少なくないのに...
表替えの時期を逸してしまい、7年が経ってしまいました。

色も褪せ、しっとりと空間に馴染み、よい感じではあるのですが、


よく見ると、表の端部が完全に擦り切れ、麻の4本糸が見えています（汗）。

目積（めせき）で丈夫な表ではあったのですが、7年の酷使に耐えられず、このような状態に。
縁（へり）が付いていれば、縁が擦り切れていたはずですが、縁なしの場合はやはりこの端部に負担が来ます。

通常、早めの畳替えであれば、表を剥がし裏に返してまた取り付ける「裏返し」を一度行います。
その後更に数年の使用を経て、今度は表自体を新しいものに取り換えるのが、表替えのセオリーです。
ちなみに床の交換は、へたり具合によります。稲藁だけで丁寧に作られたものは何十年ももつと言われています。

ただここまで擦り切れてしまった表は、裏返しは無理。
表自体の交換となりました。

せっかくなので、これまでとは違った織り方の表にしてもらおうと、、、
どれにしようかワクワクしていたのですが、選択肢はほとんどないとのこと。


実は、熊本地震が、加藤さんの取引先イ草農家さんに多大な損害をもたらしていたのでした。
イ草は、稲のように田で栽培されるのですが、その田が地震に会い水の供給が受けられなくなったり、織りの工場が被害を受け操業できなくなったりで、新たな注文に応えられない状況とのこと。
イ草は、植えてから刈取りまでに3年を要し、その間に何らかの損害を受けると数年の苦労が水の泡となったり、何年後かの収穫ができなくなったりと、とてもリスクの多い作物なのだそうです。
そういったこともあり農家は高齢の方ばかりで、跡継ぎの無い中、この地震で継続を諦める方も出始めているとのこと。

加藤さんはとても心配していて、地震が少し落ち着いた頃熊本に出向き、何とか応援するので栽培を続けてほしいと、頼みに行っていました。

で、在庫のあった「せせらぎ」と名付けられた表を入れていただくことにしました。

採寸から1週間後、朝一旦引き取って行った畳の表を替えて、午後に納品いただきました。




人に踏まれていない新しい表は、ふんわりふっくら盛り上がっています。


青畳のいい香りが部屋に充満。
我々日本人にとっては、木の芳香同様、癒しの香りですね。

加藤さんが太鼓判を押す通り、床（とこ）の方はまったくもって健在。
どこを踏んでもへたりはなく、低い目線で見ても波打ちなど無し。

畳が替わると、住み手の気持ちまでリフレッシュすると、家族で感心。
次は、裏返し→表替えの手順が踏めるよう、ちゃんと付き合っていこうと思います。

熊本のイ草農家さんが、今後も栽培を続けて行けるよう、皆さん、本物にはきちんと適正価格を支払って、応援しましょう。
日本が誇る優れた伝統的素材を絶やさないために！

埼玉県戸田市で木の住まいづくりに取り組んでいる、建築士夫婦の設計事務所です。

ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』＆『住宅リフォーム至高ガイド』（エクスナレッジ刊）その他、住宅に関する執筆多数。
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