木の家を建てる設計事務所
7~8月の1か月半でリフォーム工事を行ったお住まいがあります。
70代のご夫婦が暮らす築36年の木造住宅で、1階部分中心のリフォームでした。
とあるシニア向け雑誌の取材を受けていただくことになり、先日撮影に立ち会ってきました。
このお宅のリフォームでの一番の要望は、寒さの解消と陽の射さない居間を明るくしたい、とのこと。
冬の朝の居間の気温は4℃まで下がるとのことで、「とにかくこの寒さを何とかしたい」とご夫婦が口を揃えていました。
断熱改修が主で、大きな間取り変更なども必要ないため、建て主さんは当初、工務店さんに工事だけ依頼できればと思っていらっしゃいました。
が、国の「住宅省エネリノベーション促進事業費補助金」を受けることになり、混み入った申請が必要とのことで、設計者の私が関わることになりました。
これまで大規模リフォームで行ってきた通常の設計監理ではなく、補助金のための交付申請&実績報告作業と、工事の項目と概要決めをアドバイスする、簡易設計をお引き受けしたかたちです。
長年感じてきた不自由に向き合い、せっかくリフォームを決意されたのですから、寒さ解消だけにこだわらず、老後を安心して快適に暮らすため、今回の改修でやれることは何か、といった観点で計画を見る必要があります。
後から、こうすればよかったとか、あれもやっておけばよかったと思うことの無いよう、検討だけはしておくべきなので。
耐震補強、床下の防湿、キッチンの交換、床の段差解消、手摺や腰掛の設置、収納の見直し、仕上げ素材の選択、配線や機器の見直しなど、やった方がいいのか、優先順位はどうかなど、一つ一つ取り上げて検討を重ねていきました。
予算を睨んで諦めたものもあれば、検討段階で重要さを認め増やした工事項目もあります。
寒さ解消の手段にしても、さまざまな選択肢を組み合わせて考える必要がありました。
断熱施工を、窓床壁天井の、どの部分、どの範囲、どんな仕様で行い、、、その場合期待できる効果はどうなのか?
どんな暖房を想定するのか、間仕切りをどのように考えるか、も併せて検討しました。
結果、見かけはあまり変わらずも温熱環境を大きく改善することになる断熱工事をメインに、さまざまな箇所でささやかな改善策を積み重ねる工事内容となりました。
1か月の仮住まい中に床を作りなおすなどの大きな工事を行い、その後の半月間で、残りの工事を住みながら行い、りフォームは仕上がりました。
工務店さんは、住み手の事情に合わせて、効率の良い工事の順序を模索しながら段取りよく進めてくれ、シニアの建主さんの工事ストレスは最小限に抑えられました。
樹脂製内窓を設置。
他の窓では、断熱ガラスに交換や樹脂サッシ新設も。
耐震補強をしながら新たに設けた東窓。
午前の陽が燦々と射すように。
和室との境を全開放建具に変更し、ランマ部分も明り取りに。
暗かったリビングが明るくなった。
廊下との境に戸を設けたことで、玄関の冷気が部屋中に及ばないための工夫。
引戸は吊り戸形式にすることで、敷居が省略され掃除もラク。
壁面一杯に設けた造り付け収納。一画をデスクに。
手持ちのライサ―置き場と、炊飯時用引き出しも組み込んだ。
before
玄関の置き型ベンチと手摺。足の悪いご主人の必需セット
床張り替え時に敷居を取り除いてフラットな床に。
before
リフォームを終えて1か月。今の季節では断熱の効果は測りかねますが、冬が今から楽しみとのこと。
間仕切りの見直しで、部屋どうしのつながりが濃くなり、家が広々と感じるようになったこと。
段差がなくなり無垢板に替わった床が、何とも気持ちよく快適であること。
壁いっぱいの造り付け収納設置で、雑多なものが収まるべき場所に納まり、デスクができたことで通信や調べ物がパソコンでスムーズに行えるようになったことなど、リフォームの成果を本当に喜んでくださっていました。
ビフォーアフターで目を見張るような大きな変更はない改修でしたが、ちょっとした見直しや改善が複合的に効いて、何とも満足度の高いリフォームになったようです。
「ささやかだけれど、役に立つリフォーム」。レイモンドカーヴァーの短編タイトルを拝借。
ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』&『住宅リフォーム至高ガイド』(エクスナレッジ刊)その他、住宅に関する執筆多数。
新築・リフォームのご相談、土地探し、耐震診断、既存住宅調査など、小さなことでもお気軽にお問合せ下さい。
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