木の家を建てる設計事務所

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斜め張りの水平構面

2016/05/31

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斜め張り?
水平構面?

何のことかと思われる方もいらっしゃるかと。

「建物の耐震・耐風」と言えば、壁に配置する筋違や耐震パネルが浮かびます。
実は、床面も重要な耐震要素なのですが、あまり知られていません。
垂直の耐震要素である壁に対し、床や屋根などで担う耐震要素を、水平構面と呼びます。

揺れの力が加わった時に、
建物が傾こうする力に対し、変形しないよう耐震壁が踏ん張り抗いますが、同じように屋根面や床面もひしゃげずに踏ん張ることで、建物の傾きを防ぎます。

また、上階で踏ん張った壁から、→下階→地盤へと力が伝わるためには、床がしっかりとした堅さを備えて、力を伝達する強度が必要なのです。

これまで水平構面はあまり意識されずに来たのですが、梁や床下地のつくり次第で、耐震性に違いが出ることが実験などで明らかになってきました。
それを受け近年では、元々
2×4住宅で行われていた厚い構造用合板で床面を固める工法が、ハウスメーカーやパワービルダーの住宅から始まり、町場の工務店がつくる建物でも採用され、広く普及してきました。
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強度や性能が上がることが明らかでも、作業が面倒であったり、コストが著しく上がってしまうものはなかなか普及しないものです。
この工法が瞬く間に普及した要因は、合板がプレカット工場でサイズ通り加工されてくること、上棟作業の一環として2階床に構造用合板を敷き並べてしまえること、床ができるためその後の作業効率が格段に上がるといった、作業上のメリットゆえでした。
それに伴って床構面の強度が確保され、耐震性が軒並み上がったのはよいことでした。
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我々も参加する「耐震・省エネ・防露工法開発研究会」では、この水平構面に合板を用いず、無垢の製材板で強度のある床をつくれないかと、研究や実験を行ってきました。

接着剤を多用して薄板を重ね接ぎした合板でなく、地域で育った杉材の、柱を取った残りの端材から作った板や、間柱や野地板として流通している製材品を使うことができれば、住む人の健康にとっても、建物の耐久性にとっても、森の循環にとっても、地域経済にとっても、利があります。

板を梁に対して直角に張る従来の床張り方法では、水平構面としての強度が不足することは、以前の実験で明らかでした。
今回の研究会では、
筋違のように板を45度斜めに張ることで強度を得ることを基本に、様々なモデルを検討し実験を行い、推奨する構成を絞り込むことができました。
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そしてこの向陽町の家で、初めて採用することができました。

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屋根構面の斜め張りは、このまま2階の室内に露し仕上げとなります。

2階床の斜め張り。
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厚み3cm、巾10.5cmの板を、隙間をあけて張っています。
一般的な設計のモジュールに合わせ、板のロスや留め付けのイレギュラーを減らすため、許容できる隙間を実験で確かめた上での施工です。

斜め張りの施工が進むにつれ、建物の揺れを拘束する力が増していることを感じたとは、大工さんの弁。

実際に施工してみてもらい、様々な知見がありましたが、それは今後の研究会で課題としていこうと思います。





埼玉県戸田市で木の住まいづくりに取り組んでいる、建築士夫婦の設計事務所です。

ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』&『住宅リフォーム至高ガイド』(エクスナレッジ刊)その他、住宅に関する執筆多数。
新築・リフォームのご相談、土地探し、耐震診断、既存住宅調査など、小さなことでもお気軽にお問合せ下さい。

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