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セルロースファイバー断熱をお薦めしています

2015/02/17

わがアトリエ・ヌックでは、木の家の、外皮の断熱に力を入れていますが、その断熱方法として「セルロースファイバー断熱」をお薦めしています。
我々が、セルローズファイバー断熱を優れていると思う点について、書いてみたいと思います。
長~くなりますが、」お付き合いを。
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一点目 【リサイクル品が原料であるということ】
セルローズファイバーは新聞紙の廃物利用品です。
 「じゃあ、うちの古新聞も?」と思われるかもしれませんが、それはハズレです。
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他の業者さんはわかりませんが、いつもお願いしているZテクニカさんでは、余分に刷って配達されなかった新聞紙のみを原料とした、ファイバーを使っています。

理由は、回収古紙にはチラシや雑誌などが混じっており、使われているカラーインクの安全性がわからないためです。

新聞紙の方は、大豆を原料としたインクを使用しており、断熱材として使ったときにも、害を心配するには及びません。
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まあ、回収したものより、余った紙を使った方が、品質も流通も安定していて、管理がしやすいということもあるのでしょうね。

ということで、発行部数は減り続けているらしいですが、新聞が無くなることはないでしょうから、石油などを原料としたものに比べ、製造エネルギーが低く、当面のゴミも減らす持続可能な素材と言えそうです。


二点目 【材料自体の湿気容量が大きいこと】

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セルローズファイバーは、断熱材の分類で言うと、「繊維系断熱材」にあたります。

細かな繊維が絡み合って、綿(わた)のような状態になっている断熱材のことです。

セルローズファイバー以外に、グラスウールやロックウール、ポリエステルウール、羊毛などがあります。

繊維系の断熱材は、いづれも綿状であることから、湿潤な空気に触れた時にはその湿気を吸います。

湿気を吸った状態で、温度が下がってきた場合、湿気容量の小さい素材で作られた綿では、

その素材自体が湿気を保つことができないので、湿気は水滴化して、綿を濡らしてしまいます。

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断熱材が入っているのは壁や天井裏ですから、この状態が悪名高き「内部結露」なのです。 

湿気容量の大きい素材なら、ある程度の湿気は水滴化させずに、その分子の中に湿気を水蒸気のまま保つことができます。

この湿気容量の大小は、何と言っても自然素材に分があり、羊毛や紙であるセルローズファイバーはまさにそれです。
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 普通、繊維系の断熱材を使用する場合は、室内の水蒸気が壁の中などに入っていかないような措置を取ります。

具体的にいうと、壁の仕上げ(石膏ボード)のすぐ下にビニールフィルムを張りめぐらします。洩れのないよう。 

これが私には、大いに抵抗があり、何とか「ビニールで密封」しなくていいものを、との思いで自然素材の断熱材に行き着きました。 

ただし、湿気容量が大きいとは言っても、ものすごい量の湿気が壁内に入った場合は、結露が無いとは言えません。

なので、万が一結露した場合でも、乾いた外部側に湿気が抜けるような措置は考えてはいます。

三点目  【吹き込み工法で、隙間無く充填させられること】 

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これが最も大きな長所と考えています。 

木造住宅の断熱の方法には、充填断熱と外張り断熱の二種があることはご存知かと思います。外壁の仕上げなどの関係で、我々は外張り断熱は選択していません。 

充填断熱の、外張り断熱に比べ劣る点として言われているのが、断熱材が所々で途切れてしまうという点です。 

充填断熱は、壁の厚みの部分に断熱材を入れます。この厚みとは即ち、柱や梁などの構造材の厚みに当たるわけです。外張り断熱に比してたっぷりした厚みの断熱材を入れることができるものの、柱や梁のある部分には断熱材は入りませんし、筋違いや間柱もこの厚み中に存在するので、その部分は断熱材が入らないことになります。 

しかし、こういった部材の部分に断熱材が入らないことより問題なのは、、、この細々と分割されたスペースに、断熱材を隙間無く入れるのが難しいことなのです! 

通常、グラスウールやポリエステルウールはマット状、ウレタンやポリスチレンならボード状の形をしており、これを大工さんがスペースに合せて切り取りながら入れます。斜め材の筋違いと絡む部分や、コンセントやスイッチボックスがあれば、どうしても隙間ができてしまうのは否めません。 

そのため、全体として断熱性が落ちてしまい、やっぱり充填断熱はねェ...といったことになっていました。

この点、ポンプで圧送して吹き込むセルローズファイバーは、空気で押し込まれて隅々まで入っていきます。
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柱や梁の部分も木ですから、それ自体ある程度の断熱性を持っているので、隙間なくセルローズファイバーが充たされれば、断熱性は確保されるというわけです。

断熱が途切れがちな、床と壁との取り合いや、壁と屋根との取り合い部分にもキチッと充填できます。
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断熱材の熱の伝え難さは、「熱伝導率」で表わし、この数値が小さいほど断熱性能が高いということになります。セルローズファイバーという素材自体の熱伝導率は特別小さいものではありません。グラスウールや羊毛と同程度です。しかし、きちんと隙間無く充填でき、柱の厚み分一杯の断熱材が入ることで、かなりの高断熱と高気密が期待できます。

四点目 【難燃化のために混入させてあるホウ酸が、カビ防止やシロアリ対策となること】

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これはおまけ的な要素ですが。
 

セルローズファイバーは紙が原料ですから、そのままで火を近づけると、炎を上げて燃えてしまいます。

これを防ぐために、必要最低限量のホウ酸を混入させ、燃え難くしています。 

ホウ酸は、ゴキブリ団子の原料としたり、薄めて目の消毒に使ったりと、殺菌性の認められる物質です。

壁の中のセルローズファイバーに含まれるホウ酸が、直接肌に触れたり吸い込むことは考え難いので、人に対しては有害でないと考えています。

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しかしシロアリは、意外に薬剤に対する抵抗力が低く、セルローズファイバーに含まれる程度のホウ酸でも殺虫効果が大きいのだそうな。

被害が出がちな床下の土台、柱の足元がセルローズファイバーに接しているのは、好都合なことなのです! 

 

【セルローズファイバー、デメリットも】

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やはり、、、他の断熱材に比しコスト高だという点でしょうか。

材料自体は、新聞紙が原料ですから、廉価なものです。

しかし、、、施工に手間がかかるのです。

一般的な断熱材は、大工さんが入れていくのが普通ですが、セルローズファイバーの場合は、専門の職人さんが行います。

写真を見るとお分かりいただけるかと思いますが、透湿シートを丹念に張りめぐらし、囲われたコマごとにシートに穴を開け、セルローズファイバーを吹き込んでいく作業です。

1軒当たり、2~3人で4~5日を要しますから、ある程度のコストは致し方ないのですが。
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なので、新築やリフォーム計画の初期段階から、セルロースファイバー断熱を想定した予算組をしておくことが重要だと思っています。


デメリットとして最も問題視されているのが、経年で重みによる沈下です。

ゆるゆるに吹き込むと、空隙が大きく、長い時間が経つうち自重で潰れていくのです。

沈下すると、断熱が不連続になってしまい、断熱性の低下に直結してします。

これを防ぐには、大きな空気圧で必要以上の空隙を作らないように、ギュウギュウに吹き込む必要があります。
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シートをきつめに張ることも重要で、この辺が信頼のおける実績ある業者さんを選ばなければならない所以です。 

あとは、粉塵が意外に難物なことですね。

床や壁はシートで囲われた部分に吹き込むので、それほどひどいことは無いのですが、

天井裏に吹き積もらせる方法を取った場合に、細かいファイバーの粉がもうもうと空中に舞い飛びます。

これをまともに吸い込んだらよいわけはありません。
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作業する人も大変ですし、仕上がったあとにこれが室内に出てこないよう、きちんと塞がなくてはなりません。

なので、天井にスペースの余裕がある場合でも、できるだけ吹き積もらせる方法は取らず、屋根面にシートを張って吹き込んでもらうようにしています。


今後も更に、工法や効果を業者さんと共に高めていきたいと思っています。


埼玉県戸田市で木の住まいづくりに取り組んでいる、建築士夫婦の設計事務所です。

ホッと安らげる無垢の木の家、家事がしやすくストレスのない住まい、光と風を感じる空間、健康負荷の無い自然素材の家、セルロースファイバー断熱の呼吸する住まい、高耐震住宅の設計を得意としています。
『家づくり至高ガイド』&『住宅リフォーム至高ガイド』(エクスナレッジ刊)その他、住宅に関する執筆多数。
新築・リフォームのご相談、土地探し、耐震診断、既存住宅調査など、小さなことでもお気軽にお問合せ下さい。

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